ウェディングエピソード

号泣披露宴

今回のお客様は披露宴が2時間とややコンパクトなため、盛り上げるシーンをいくつもご用意するのではなくひとつの山にかける、そんなプランニングでした。

会場は、代官山の「GRANADA SUITE」です。瀟洒な街並にとけこんだロケーションは落ち着いた大人の隠れ家を思わせるゲストハウスで、光がふりそそぐ吹き抜けのコートヤードを中心に、チャペルやバンケットなどがひとつづきに配置されています。上質なスィートルームのような心地良い空間を気に入られて、一生に一度の厳粛なセレモニーをあげられるお客様のために、まごころをこめたプランをご用意したいと思っていました。

今回お式をあげられるおふたりは、長年の遠距離恋愛を実らせてゴールされました。しかも、おふたりともご実家から離れてお仕事に専念されていたため、ご両家のみならず主役のおふたり自身も久しぶりにご家族とご一緒にかけがえのない時間を過ごされるのです。式の後はご両家そろってのご旅行も控えています。そこで私たちは、結婚のお披露目と同時にご家族の絆をあらためて感じていただけるプランをご提案させていただきました。

そのために、実は新郎新婦に内緒でご両家のご家族とも打ち合わせをさせていただきました。慈しみを持ってお子様を育ててこられたご両親のあふれる思い。お話は尽きません。そして当日。私たちは「その時」を心待ちに、セレモニーにのぞみました。

ご友人たちのスピーチやイベントが続くなか、そっと拝見しますと何やら落ち付かないご様子の方がおひとり。ご新婦のお父様です。そんなにソワソワされては気づかれてしまうのでは……と気をもみながらも、プログラムは進んでいきます。そしていよいよ、メインイベントの時がやってきました。

それは、ご新婦がご両親に宛てた手紙を朗読される手前のタイミングでした。
司会者が、「実はご新婦のお父様からプレゼントがございます」と告げると、ご新婦はもとより、会場全体が一瞬どよめきました。「このタイミングでお父様からプレゼントとは一体何だろう……」皆さん、期待に胸をワクワクされているのが分かります。
戸惑いながら、お父様の前に歩み出るご新婦。でも、お父様は何も持っていらっしゃいません。そのとき、会場の照明が落ち、音声が流れだしました。

「たかぎ、さおりさん」「あー、うー」

一瞬間が空き、

「マ、ママー」「パッパー」
「よくやった、サオリ!」「サオリ、すごい!」

何とそれは、生後間もなくから小学生ぐらいまでのご新婦の声を編集したカセットテープだったのです。そこには、若き日のお父様、お母様の肉声もおさめられています。実はこのテープ、何十年もかかってお父様がひそかに録りためていたものでした。

スピーカーからは、次々と声が流れてきます。ご新婦に呼び掛けるお母様の声。ご新婦が初めて発した「パパ」「ママ」の声。それだけではありません。食卓の音、おもちゃの音、ほかのご家族の声まで……。当時の音がそのままに、当時の空気をまとっていまこの会場いっぱいに流れているのです。

ご新婦はあふれる涙をこらえられず、その場にくずおれてしまいました。それをお父様が支え、それからご新郎にゆだねました。
その場にいた少なくないゲストはみな、号泣です。嗚咽が反響して、涙の大合唱になってしまいました。私たちスタッフも思わずもらい泣きです。
そして、万感の想いを込めたご新婦からの手紙の朗読。
そこには、愛情を持って育ててくれたご両親への温かな気持ちが込められていました。

ご新婦とご両親の美しい記憶の断片を共有したゲストすべての心も、温かなもので満たされていきます。その横で、まだ涙をぬぐっていらっしゃる優しいご新郎……。どうやら、視界が霞んでスピーチの紙が見えなくなってしまったようです。

披露宴のあと、あらためてカセットテープがご新婦に手渡されました。カセットデッキをお持ちでないというご新婦のために、コンパクトな再生機を一緒にお渡しすることをご提案できてよかったと心から思っています。

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GRANADA SUITE(東京)
東京都渋谷区猿楽町17-21

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